【製造業向け】人材派遣業界で価格調整(カルテル)疑惑。製造現場への影響と技術継承の課題を考える

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【製造業向け】人材派遣業界で価格調整(カルテル)疑惑。
製造現場への影響と技術継承の課題を考える

2026年6月、日本の製造業を支える技術系人材派遣の大手5社が、派遣料金の引き上げを巡ってカルテル(価格カルテル)を結んでいた疑いがあるとして、公正取引委員会から独占禁止法違反による立ち入り検査を受けたというニュースが報じられました。
(▶ 参考ソース:技術系派遣5社に公取委が立ち入り検査…派遣料金引き上げでカルテル疑い

慢性的な人手不足に悩む製造業にとって、派遣社員は今や欠かせない労働力です。
「物価高で彼らの生活も苦しいだろう。少しでも彼らの給料に反映されるなら…」と、自社の利益を削ってでも苦渋の決断で派遣料金の値上げを受け入れた経営者様も多かったはずです。

しかし、今回の報道が浮き彫りにした最大の闇は、「値上げされた料金が現場の派遣社員に還元されず、派遣会社に不当に『中抜き(ピンハネ)』されていた疑いが強い」ということです。

【現場のリアル】アルバイトからの生々しい声

私は以前、現場で働くアルバイトの方から直接「中抜きしてて、あこぎな商売してんちゃうぞ!」と強い怒りの声をぶつけられたことがあります。
現場で汗を流して働く労働者にとって、中抜きはそれほどまでに嫌悪され、モチベーションを奪う行為なのです。しかし一方で、企業側(工場側)からすれば、自社に求人力がないため、高い手数料を払ってでも派遣会社に頼らざるを得ないという、極めて切実な現実(ジレンマ)が大前提として存在します。

本コラムでは、製造業の現場やゼネコン営業として数多くの工場を見てきた行政書士の視点から、「派遣会社のカルテルと中抜きの実態」、そして「責任を負いたくない働き方が生み出す、製造業の長期的な技術衰退のリスク」に斬り込みます。
あわせて、単なるコスト削減にとどまらない、補助金を活用した「省力化」と「正社員の処遇改善」による根本的な解決策を解説します。

1. 派遣会社5社のカルテル問題と「中抜き」のビジネス構造

まず、ニュースになった「派遣会社のカルテル問題」について整理しましょう。これは、大手を含む技術系派遣会社が、取引先(主に製造業などの企業)に対して派遣料金の引き上げを要求する際、足並みを揃えて価格交渉を行う取り決めをしていたというものです。

本来、自由競争であるべき市場において、派遣会社同士が裏で手を結び価格を釣り上げる行為は、独占禁止法違反にあたります。利益を圧迫されながらも、背に腹は代えられず要求を飲まざるを得なかった製造業の経営者にとっては、決して許容できるものではありません。

「中抜き」自体は悪なのか?

派遣というビジネスモデルにおいて、「中抜き(マージン)」そのものが直ちに悪というわけではありません。派遣会社は、採用活動、社会保険の加入、給与計算、教育研修、そして労務トラブルのリスクといったコストを負担しています。ある意味で、これが日本のビジネスの構造であり、企業が直接雇用する際の手間やリスクを外注している対価とも言えます。

しかし、今回のカルテル問題が浮き彫りにしたのは、「そのマージン(中抜き)の割合や価格設定が、適正な市場原理に基づかず、供給側の都合で不当に吊り上げられていた」という事実です。製造業が一生懸命に製品を作って出した利益が、不透明な構造によって社外に流出している現状は、決して健全とは言えません。

2. なぜ製造業は「派遣」に頼らざるを得ないのか?(現状の必要性)

では、なぜこれほどコストがかかり、時に搾取されるリスクがあっても、製造業は派遣社員に頼らざるを得ないのでしょうか。現場目線で見ると、そこには明確な理由が存在します。

圧倒的な「地方の採用難」と自社の求人力の限界

「ハローワークに求人を出しても、半年間応募がゼロ」。これは地方の町工場では珍しい話ではありません。国が発表している有効求人倍率を見ても、製造現場の保安・作業系の職種は常に高い倍率(人手不足)を示しています。自社単独での採用力に限界がある地方の企業にとって、人材を集めてきてくれる派遣会社は、文字通り「頼みの綱」となっているのです。

需要の波に対する「調整弁」としての役割

製造業には繁忙期と閑散期があり、受注量の増減が激しい業態です。正社員を固定費として抱えすぎると、不況時に経営が立ち行かなくなります。短期的な労働力を必要な時だけ確保できる派遣は、資金繰りにおいて重要なバッファ(緩衝材)となります。

「責任を負いたくない」働き方の台頭

さらに踏み込むと、この問題の背景には「労働者側の意識の変化」も大きく絡んでいます。現場を回っていると、「正社員のように重い責任を負いたくない」「残業や異動の指示を受けず、時間通りに終わる割り切った働き方がしたい」と、あえて派遣という働き方を積極的に選んでいる層が一定数存在することに気づきます。
経営者としては「自社の正社員として雇い、育てたい」という想いがあっても、「正社員への登用を打診しても、責任が増えるからと断られる」というジレンマが無数に発生しています。

3. 【コスト比較】正社員と派遣、結局どちらが得なのか?

ここで、経営的な視点から「派遣社員」と「自社で正社員を雇った場合」の概算コストを比較してみましょう。(※金額はあくまで一般的な地方製造業をモデルとした概算の目安です)

項目 【自社で正社員を雇う場合】 【派遣社員を利用する場合】
労働者への支払い(月給換算) 約 250,000円 約 250,000円
法定福利費(社会保険料等) 約 40,000円(※企業負担分) (※派遣会社が負担)
採用・教育コスト 数万〜数十万円(※採用時) (※派遣会社が負担)
派遣会社へのマージン(中抜き) なし 約 120,000円〜150,000円
(※マージン率30〜40%の場合)
企業が支払う総コスト(月額) 約 290,000円 + 採用費 約 370,000円 〜 400,000円

【参考:マージン率の公式データ】

厚生労働省が公表している「労働者派遣事業の令和4年度事業報告の集計結果」等によれば、全国の派遣事業における平均的なマージン率(派遣料金から派遣労働者の賃金を引いた額の割合)は約30%強で推移しています。つまり、企業が支払う料金のうち、約3割が派遣会社の利益や運営費に消えている計算になります。
厚生労働省:労働者派遣事業の事業報告の集計結果について

数字だけを見れば、自社で正社員を雇ったほうが月額コストは圧倒的に安く済みます。しかし、前述した通り「採用費用をかけても人が来ない」「雇ってもすぐに辞めてしまう」というリスクがあるため、高いマージン(中抜き)を払ってでも派遣に頼らざるを得ないのが現状なのです。

4. 短期特効薬の代償。派遣依存が招く「技術力の衰退」という致命傷

高いコストを払ってでも目先の生産を回すための「特効薬」として機能する派遣社員ですが、この状態を5年、10年と長期的に継続した場合、製造業にとって「技術力の衰退」という致命的な代償を払うことになります。

① 退職リスクによる「育てた意義の喪失」

「3年かけてようやく一人前に機械を操作できるようになったと思ったら、時給が50円高い別の工場へあっさりと移籍されてしまった」。現場ではよく聞く悲劇です。派遣社員は会社への帰属意識が薄いため、定着率が低く、企業が投資した教育コストと時間がことごとく無駄(徒労)になってしまいます。

② 給料が上がらない構造とモチベーションの低下

カルテルの影響などで派遣料金が引き上げられたとしても、それがそのまま労働者の手取りに反映されるとは限りません。一方で、製造業側は高い派遣料金を支払っているため、自社の正社員の給与原資まで圧迫されてしまいます。結果として「現場全体の給与水準が上がらない」という最悪のループに陥り、自発的にスキルを磨こうという気概は生まれません。

③ ベテランの技術が「ブラックボックス化」する

私が製造業の現場を見てきた中で最も恐ろしいと感じたのは、「機械のオペレーションは派遣社員が回しているが、トラブル発生時の対応や、高度な段取り替えができるのは、数人の高齢ベテラン正社員だけ」という状況です。
マニュアル化された単純作業は責任を持たない派遣社員で賄えますが、「音の違いで機械の不調に気づく」「図面から最適な加工手順を瞬時に割り出す」といった暗黙知は、長年自社にコミットし、責任を持って働く正社員でなければ培われません。

数年後、そのベテランが退職した時、現場には「言われた作業しかできない(責任を負わない)スタッフ」だけが残されます。これは、日本の製造業が誇る技術力が途絶える瞬間でもあります。

5. 【解決策】補助金を活用した「省力化」と正社員化へのシフト

では、この負の連鎖から抜け出すためにはどうすれば良いのでしょうか。
結論から言えば、「人に頼るべき業務と、機械に任せる業務を完全に切り分け、浮いたコストを正社員に集中投資する」ことです。そのための強力な武器が、経産省系の「設備投資補助金」です。

ステップ1:単純作業を「省力化設備」で代替する

例えば、「中小企業省力化投資補助金」「ものづくり補助金」を活用し、これまで派遣社員数名で行っていた検品作業、搬送作業、単純な組み立て作業を、協働ロボットや自動化システムに置き換えます。
補助金を活用することで、導入初期コストを1/2〜2/3程度に抑えることが可能です。これにより、毎月支払っていた数百万円単位の「派遣料金(固定化しつつある変動費)」を大幅に圧縮できます。

ステップ2:浮いたコストで既存社員の「給与」を上げ、責任ある正社員を育成する

機械化によって浮いた原資(派遣会社への中抜き分)を、自社の正社員の処遇改善(給与アップ)に充てます。
給与水準を引き上げることで、既存社員の定着率を高めるだけでなく、「責任を持ってコア業務(プログラミング、保守、若手教育、新製品開発など)に取り組む」ことへのモチベーションを向上させます。

労働集約型の「人海戦術」から、設備投資による「少数精鋭の高付加価値組織」への転換こそが、カルテルや中抜きに怯えることなく、自社の技術力を次世代へ残す唯一の道です。

6. 「個」を見る経営へ。現場を知る行政書士がサポートします

最後に、私がこの記事を通じて最もお伝えしたかった「本音」を少しだけ書かせていただきます。

もちろん、大手の人材派遣会社には優秀なシステムがあり、そこから送り込まれる人材が現在の日本経済を支え、欠かせない存在となっていることは間違いありません。それは深く理解しています。
しかしそれでも、現場で汗水流して必死に働く「労働者(個)」や、高い技術を持ちながら資金繰りに苦しむ「町工場(個)」が構造的にないがしろにされ、搾取されてしまうような状況には、一人の人間として、また実務家として「肝が煮える」ような強い憤りを感じずにはいられません。

大きな経済のうねりの中で、私一人の力はちっぽけなものかもしれません。
しかし、たまにはビジネスの効率だけでなく、「倫理的」な視点に立ち、現場で働く「個」の顔をしっかりと見て、彼らが正当に報われる仕組みを作っていくべきではないでしょうか。

私が製造業の皆様に「補助金を活用した設備投資」を強くお勧めしているのは、単に会社のコストを下げるためだけではありません。機械化によって生み出された利益を、自社で頑張ってくれている正社員やスタッフの「給与」や「労働環境」という形で還元し、働く人が報われる強い組織を作っていただきたいからです。

NAKA行政書士事務所は、単なる書類の代書屋ではありません。ゼネコン営業や製造業での現場経験を持つ代表が、社長の抱える「人手不足のジレンマ」や「技術継承の不安」、そして「社員を幸せにしたいという想い」に深く寄り添い、現場のリアルな課題感に基づいた説得力のある事業計画を共に構築します。

「このままでは技術が途絶えてしまう」「働く社員が報われる組織に変えていきたい」とお考えの経営者様は、ぜひ一度ご相談ください。御社の技術と、そこで働く「人」を守るための第一歩を、共に踏み出しましょう。

省力化・自動化に向けた補助金申請から、経営の右腕としての法務サポートまで。
「顧問契約」のご相談も承ります。

7. この記事を書いた人(専門家プロフィール)

[行政書士 中田 大智]

NAKA行政書士事務所 代表 / 関西の製造業支援特化型・行政書士

関西を中心とした製造業(町工場・メーカー)の支援に特化した行政書士。企業が直面する人手不足や法改正のリスクに対し、設備投資に関する「ものづくり補助金」や「省力化投資補助金」の事業計画書作成支援をはじめ、法務の観点から適法かつ実効性のある社内体制の構築をサポート。工場拡張に伴う許認可手続きまで、製造業に関わる行政手続きを幅広く対応しています。「社長がモノづくりに専念できる環境をつくる」をモットーに、独立した立場で経営の右腕(法務顧問)として伴走します。

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